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公文書開示審査会答申第141号

更新日:2014年12月5日 印刷ページ表示

「群馬県消費生活課相談員(以下甲という)が一般県民(以下乙という)に、CD-Rが正常な使用中のPCを破壊したのでそのCD-Rのメーカー(以下丙という)にPL法に基づいて連絡調整をしてくれと依頼されても、甲は乙に甲から丙に申し入れはできない等と言い放って、甲は前述の乙の依頼を断ってよい、又は断らなければならない、という内容」外1件の公文書不存在決定に対する異議申立てに係る答申書

群馬県公文書開示審査会 第二部会

第1 審査会の結論

 群馬県知事が行った決定は妥当であり、取り消す必要はない。

第2 諮問事案の概要

1 公文書開示請求

 異議申立人(以下「申立人」という。)は、群馬県情報公開条例(平成12年群馬県条例第83号。以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県知事(以下「実施機関」という。)に対し、別表の(あ)欄に記載の年月日付けで、別表の(い)欄に記載の開示請求(以下「本件各請求」という。)を行った。

2 実施機関の決定

 実施機関は、別表の(う)欄に記載の年月日に、本件各請求に係る公文書について存在しないことを確認し、別表の(え)欄に記載の決定(以下「本件各処分」という。)を行い、不存在の理由を次のとおり付して、申立人に通知した。
 (不存在の理由)
 開示を請求された公文書の内容又は件名に関する公文書は保有していないため。

3 異議申立て

 申立人は、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定に基づき、平成26年1月6日付けで本件各処分を不服として実施機関に対し異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。

4 諮問

 実施機関は条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して平成26年2月4日、本件異議申立て事案の諮問(以下「本件事案」という。)を行った。

第3 争点(本件各請求に係る公文書の公文書不存在決定について)

 本件各請求に係る公文書を不存在とした実施機関の決定は妥当であるか。

第4 争点に対する当事者の主張

1 申立人の主張要旨

(1)条例第14条第2号イ違反であり、また原処分は群馬県条例を持ち出すまでもなく職権濫用・怠業・憲法違反である。

(2)処分庁が貴審査会に提出した「理由説明書(以下「乙」という)」の製造物責任法(以下「PL法」という)の法解釈は明らかに間違っている。PL法というものは、消費者が当該製造物(以下「丙」という)によって2次被害があり、丙の不具合を指摘すればよいのであり、PL法でいう製造者はこの指摘があれば丙の不具合を直したり、丙によって生じた2次被害を補償しなければならない。第一乙に記されている、「製造物責任法は、製造物の欠陥によって生命、身体又は財産に損害を被った場合において、製造物に欠陥があったこと、拡大損害が発生したこと、製造物の欠陥に損害が生じたことの事実を証明した場合、被害者は製造業者等に対して損害賠償を求めることができる」という解釈は、常識でも間違っていることがわかる。消費者がここまで証明しなければならないとしたら、旧来の民法と同じことになってしまい、わざわざPL法という新しい法律が制定されるわけがない。PL法は、消費者には上記の乙からの引用の因果関係を立証する義務がないのが特徴であり、わざわざ裁判までしなくても消費者の保護・救済をするための法律である。この間違った法解釈を申立人に異議申し立てをされても乙に記して押し通そうとし、地方公務員法でいう怠業罪・職権濫用罪をし続けようとするとは笑止千万である。

(3)本件各請求で名指しした職員は、申立人の要望を悉く撥ね付ける等、怠業罪・職権濫用罪を恒常的にしている。

(4)総合的にみると、上記の不法行為は当該職員の各個人の独断でできるわけがなく、この不法行為を行うという共同謀議した公文書があるはずである。

2 実施機関の主張要旨

 消費者安全法(平成21年法律第50号)第10条第1項で、都道府県には「消費生活センター」の設置義務があり、同法第8条第1項第2号で消費者安全の確保に関する事務を行うこととされている。そして、群馬県消費生活センター(以下「県センター」という。)は、消費者からの苦情相談等に応じることをその役割としており、消費者からの製品欠陥等の苦情相談等にも対応している。
 また、地方公務員法(昭和25年法律第261号)第32条には、法令等及び上司の職務上の命令に従う義務が定められており、また、群馬県非常勤嘱託職員就業要領の第13条第2項には、非常勤嘱託職員の法令等に従う義務が定められている。
 消費生活課職員及び相談員は消費者安全法その他の法令を遵守する義務があり、苦情相談等を断ってよい又は断らなければならないというような法令に反する趣旨の公文書を作成又は取得することはない。

第5 審査会の判断

1 争点(本件各請求に係る公文書の公文書不存在決定について)

(1)申立人は、大要、「本件各請求で名指しした職員は、申立人の要望を悉く撥ね付ける等、怠業罪・職権濫用罪を恒常的にしており、これらの不法行為は当該職員の各個人の判断でできるわけがなく、この不法行為を行うという共同謀議した公文書があるはず」と主張している。一方、実施機関は、「消費者からの苦情相談等に応じることが県センターの役割であり、消費者安全法その他の法令を遵守する義務があるため、苦情相談等を断ってよい又は断らなければならないというような法令に反する趣旨の公文書を作成又は取得することはない」と主張する。そこで、本件各請求に係る公文書が実施機関における事務処理において作成・取得されたか否か検討するものとする。
 なお、本件各請求には、「乙(一般県民)の依頼を断ってよい、又は断らなければならない、という内容」とあるが、個人情報開示請求ではなく公文書開示請求であるため、不特定多数の「一般県民に対して」のものが存在するか否かという観点から審査するものとする。

(2)消費者安全法第10条により都道府県に設置義務がある「消費生活センター」は、同法第8条第1項のとおり消費生活相談等の事務を実施する役割がある。そのため、県センターでは県民等から消費生活に関する相談を受けた場合、その内容を聴取し必要な助言や情報提供のほか相談者と事業者との間に立って交渉する、あっせんをおこなうなど相談内容の解決に向けた業務を行っている。また、県センターに対する相談内容は、「契約・取引に関する相談」や「製品トラブルに関する相談」、「多重債務の相談」など多種多様なものがあり、不特定多数の県民から広く相談が寄せられるものである。

(3)ところで、県センターは地方公共団体の一機関であるため、実施機関が主張するとおり消費者安全法のほか地方公務員法その他の法令に従うのは当然のことであるが、そもそも相談に応じることが役割の県センターにおいて、不特定多数の一般県民からの苦情相談等を「断ってよい又は断らなければならない」という趣旨の公文書を作成及び取得することはあり得ないことである。そのため、本件各請求に係る公文書は存在しないとする実施機関の説明に特段の不自然な点は認められない。

(4)その他、申立人は「各個人の独断でできるわけがなく、この不法行為を行うという共同謀議した公文書があるはずである」と主張するが、この主張は実施機関が本件各請求に係る公文書を作成・取得したものと言うには根拠に乏しいものである。

(5)したがって、本件各請求に係る公文書を不存在とする実施機関の判断は妥当であると認められる。

2 結論

 以上のことから、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
 なお、申立人は異議申立書において、本件各処分は条例第14条第2号イに違反すると主張する。しかし、同規定は個人識別情報であっても一般に公にされている情報については、あえて非開示情報として保護する必要性に乏しいものと考えられることから、ただし書により、本号の非開示情報から除くこととしたものである。そのため、本件各請求に係る公文書は不存在であるという実施機関の判断が妥当である以上、本件各請求に係る公文書が存在することを前提とした申立人の当該主張は是認することはできない。
 また、申立人はその他種々主張するが、本答申の判断を左右するものではない。

第6 審査の経過

 当審査会の処理経過は、以下のとおりである。

審査会の処理経過
年月日 内容
平成26年2月4日 諮問
平成26年3月13日 実施機関からの理由説明書を受領
平成26年3月31日 異議申立人からの意見書を受領
平成26年7月29日
(第40回 第二部会)
審議(本件事案の概要説明)
平成26年9月24日
(第41回 第二部会)
審議(実施機関の口頭説明)
平成26年11月21日
(第42回 第二部会)
審議
平成26年12月5日 答申
(別表)
項番 (あ)
請求年月日
(い)
開示を請求する公文書の内容又は件名
(う)
決定年月日
(え)
決定
1 平成25年12月19日 群馬県消費生活課○○○○及びその他の相談員(以下甲という)が一般県民(以下乙という)に、CD-Rが正常な使用中のPCを破壊したのでそのCD-Rのメーカー(以下丙という)にPL法に基づいて連絡調整をしてくれと依頼されても、甲は乙に甲から丙に申し入れはできない等と言い放って、甲は前述の乙の依頼を断ってよい、又は断らなければならない、という内容 平成25年12月27日 公文書不存在決定
2 平成25年12月19日 群馬県消費生活課○○○○及びその他の相談員(以下甲という)が一般県民(以下乙という)に、CD-Rが正常な使用中のPCを破壊した(以下当該事案という)のでそのCD-Rのメーカー(以下丙という)にPL法に基づいて連絡調整をしてくれと依頼されても、甲は乙に甲から当該事案について丙に申し入れはできない等と言い放って、甲は前述の乙の依頼を断ってよい、又は断らなければならない、という内容 平成25年12月27日 公文書不存在決定

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