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労働争議の調整事例

更新日:2021年3月25日 印刷ページ表示

※過去に労働委員会で扱った事例を参考にした架空の事件を掲載しています。
※解決の仕方はあっせんの事案ごとに異なりますので、以下の事例は参考としてご覧ください。

事例一覧

(事例)1 経営不振による解雇
(事例)2 退職一時金
(事例)3 配置転換
(事例)4 誠実な団体交渉の要求
(事例)5 団体交渉ルールの確立

(事例)1 経営不振による解雇

事案の概要(労働組合からの申請)

 組合員Aは、サービス業を営む会社で働いていたが、突如会社から「会社の経営が悪化し、これ以上雇い続けられないため辞めてほしい」と言われ、解雇通告を受けた。労働組合は、組合員Aの当該解雇には正当な理由がないとして解雇撤回を求めて団体交渉を申し入れた。その後3回の団体交渉が行われ、組合は交渉の中で、会社の経営状態が分かる資料を求めるとともに、組合員Aが整理解雇対象者の選定基準に該当する理由の説明を要求した。しかし、会社はこれらの要求に対し組合を納得させる説明をすることができなかったため、組合は解雇撤回の要求を強めた。一方で、会社側が組合員Aの解雇に退職金の優遇措置を提示したものの、組合が納得できる水準ではなかった。その後、更に1回団体交渉を行ったが、合意に至らなかったため、組合は紛争の解決を求めてあっせん申請をした。

あっせんの結果

 あっせん員の事情聴取の中で、会社側は経営状態悪化により整理解雇を行う際に求められる解雇の必要性や解雇対象者の選定基準等の説明を労働者に対し十分にしていなかったとして会社側の非を認め、あっせん員を通じてあらためて選定基準を示した。一方で会社の経営悪化により組合員Aの職場復帰は難しいとの見解を示した。そのため、あっせん員が金銭解決を組合に打診したところ、交渉で提示された退職金優遇措置の額に一定割合を増額した額を解決金として支払うことで両者の合意が得られ、解決となった。

(事例)2 退職一時金

事案の概要(労働組合からの申請)

 組合員Bは入社した当時、退職一時金の支払いがある旨の説明を受けており、就業規則にもその規程が存在することを確認していたが、会社が経営状態の悪化から労働者に知らされない間に退職一時金を支給しない旨に就業規則を変更していた。就業規則変更直後に退職した組合員Bは、在職中組合に加入していなかったが、退職一時金が支払われないことを不満に思い、退職直前に合同労働組合に加入した。その後、組合はそのような就業規則の変更は違法であり、組合員Bには適用されないとして、会社に対して退職一時金の支払いを求めて団体交渉の実施を要求した。しかし、会社は、組合員Bの退職後、従業員への意見聴取を行い就業規則の改正が事後的に有効となっており、その後に退職した職員にも退職一時金を支給していないため、組合員Bに退職一時金を支払うことはできないとして、要求を拒否した。その後更に1回団体交渉を行ったが物別れに終わったため、団体交渉の解決を求めてあっせん申請した。

あっせんの結果

 あっせんの場において、会社側は就業規則を変更する際に、組合員Bへの十分な説明と周知ができていないなど手続に不備があったことを認めたものの、就業規則変更後、意見聴取の手続きを実施して就業規則の変更が有効となった後の退職者に退職一時金を支給していないことから、組合員Bに対してのみ退職一時金を支給することに難色を示した。しかし、あっせん員が退職一時金を支払わないと賃金未払いになりかねないことを説明し、組合員Bに退職一時金の名目での支払いができないのであれば、その代わりに退職金相当額の解決金を支払うことを会社側に提案したところ了解を得られたため、あっせん案として提示した結果、組合側もあっせん案に合意し、事件は解決となった。

(事例)3 配置転換

事案の概要(会社側からの申請)

 会社側は営業成績が振るわない支店の規模縮小に伴い、当該支店に勤務する組合員Cに本社への移動を命じた。組合員Cは高血圧症の持病があり、毎日服薬しているほか、月に一度定期的に通院していた。本店業務は業務量が多く、今まで組合員Cが行っていた業務に加えて他の業務も担当しなければならないため持病の悪化につながる可能性があることから、組合を通じて異動命令の撤回を求めた。また、組合としても企業内組合の役員で当該支店分会の分会長を務めていた組合員Cの異動は支店分会の弱体化につながるため認められないとして、異動命令の撤回を求めて団体交渉を要求された。しかし、数回の団体交渉を経ても話は平行線を辿ったままであり、組合からストライキも辞さないとの意向が示されたことから、会社側が解決を求めてあっせん申請した。

あっせんの結果

 あっせんの場において、会社側からは、組合員Cが勤めていた支店の規模縮小は経営上やむを得ないものであり、支店従業員の役職構成から、組合員Cを支店に戻すことは不可能であるとの主張がなされた。一方組合側からは、組合員Cは支店での勤務を希望する正当な理由があり、会社の異動命令は組合員に対する不利益取扱いであること、分会長に対する支配介入であり認められないとし、いずれも妥協する余地を示さなかった。そのため、あっせんでの解決は困難であるとし、打切りとなった。なお、組合は会社が行った異動動命令不当労働行為であるとし、労働委員会に不当労働行為救済申立を行った。

(事例)4 誠実な団体交渉の要求

事案の概要(労働組合からの申請)

 景気が悪化する中で、会社は経営の維持のためには人件費の節減を回避できないとして、全社員に向け、翌年度から賃金水準を引き下げる旨を表明し、希望する社員に対し説明会を開いた。同社の企業内組合は、引き下げは不当であること、事前に組合に話をしない引き下げ提案は従来からの労使慣行に反することから、引き下げの撤回を交渉内容とする団体交渉を会社に要求した。しかし、会社側は「給与の引き下げについては社員に対して説明済みであるため、団体交渉には応じられない」として要求を拒否した。そのため、組合が会社に対して団体交渉の開催を求めてあっせん申請した。

あっせんの結果

 あっせん員の事情聴取の中で、会社側は社員に対して給与に関する説明は行っていたが、一方的な説明をしただけで、社員の質問は受け付けなかったこと、社内では賃金に関する取扱いはまず企業内組合に話をして団体交渉を行ってきたこと、社長が代替わりをしたばかりで社内の労使慣行をよく把握していなかったことなどの事実を確認した。その上で、賃金に関する事項は義務的団交事項であること、正当な理由がなく団体交渉を拒否したり、誠実な団体交渉を行わないことは不当労働行為に該当する可能性がある旨を説明したところ、会社から団体交渉に応じる旨の意向が示され、本件は解決となった。

(事例)5 団体交渉ルールの確立

事案の概要(労働組合からの申請)

 会社は企業内組合から団体交渉の要求があったため、当該組合と予備交渉を行い、団体交渉には応じる意向を示したが、組合側が出席予定人数を示したところ、会社側出席予定者の3倍の人数で交渉したいとのことだったため、人数を減らして会社側と同じ人数にしてほしい旨を組合に伝えた。しかし、組合は人数を減らすことはできないと主張したため、予備交渉を繰り返し、人数について調整を図ろうとしたがまとまらず本交渉に進むことができなかった。そこで、組合が団体交渉の促進を求めてあっせん申請した。

あっせんの結果

 会社は当初小規模での団体交渉を希望しており、労使の交渉員の人数差により対等な議論ができず、冷静な交渉が阻害されることを懸念していたため、労働者側あっせん員から組合側の発言者をあらかじめ限定すること、組合側の出席人数を会社側出席予定者の2倍以内とすることなどの対応を取るとの提案を組合側に行ったところ組合側の合意が得られ、会社側も了承した。そこで、今後団体交渉が円滑に行われるよう、組合から同意の得られた団体交渉に関するルールを定めた労使協定の締結について協議することを含めてあっせん案として双方に提示したところ、両者の合意が得られ本件は解決となった。