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-おもいやりと関係性のデザイン-
出品された商品を審査しているとデザイン概念の理解の幅広さを感じます。装飾の工夫、機能の改良、アイデア・センスの現代化…など、それは意匠から機能主義へ、そしてコト的なデザインへ変化していった、モダンデザイン史をふり返っているようでもあります。審査基準は「よいデザイン」です。それは「外観、機能性、品質、安全性、経済性、独自性、市場性」(募集要項より)のことですが、それらはばらばらにあるわけではなく、全体として「よいデザイン」かどうかが問われます。「よい」とはかたちやいろの場合、アイデアと機能が合致した場合、などさまざまです。しかし、いちばん大切なのは向き合う「相手」が意識されているかどうかです。「相手」とは消費者の場合もありますが、この商品が最終的に及ぼす影響を考えた遠い未来のわたしたちの場合もあるでしょう。つまり、デザインという営みが持つ「相手」に対するイマジネーション(構想力)と関係性が配慮されているかともいいかえられます。すなわち、「デザインは人とものと環境の関係の美しさ」(グッドデザイン賞2013審査評より、深沢直人)の実現ということです。
ICTによるモノを介さないデザインにより、デザイン概念が途方もなく拡張し、グッドデザインの目的がややもすると見失われがちになります。しかしながら、デザインの持つ全体を配慮できる「おもいやり」と人と人、人とモノなどの「関係性」がその環境形成において活かされる、そういうデザインとマインドが群馬から発信されることを願っています。
審査委員長 茂木 一司
茂木 一司 (群馬大学 教育学部教授)
折田 峰子 (株式会社ほんやら堂 マーケティングディレクター)
高橋 綾 (群馬県立女子大学 美学美術史学科 准教授)
辻 瑞生 (アーツ前橋 学芸員)
畠山 陽子 (センバタヤ)
笛田 浩行 ((公財)群馬県産業支援機構 専務理事)
中村 希望 (羽鳥国際特許商標事務所 弁理士)
宮崎 信雄 (ぐんま総合情報センター 所長)
布施 正明 (群馬県産業経済部工業振興課 課長)